Mac版GarageBandでは「Apple Loops」というループ音源が使用できるのですが、そのループ音源には2種類(ドラム音源を含めれば3種類ですがここでは触れません)あります。


● オーディオ音源(GrageBandでは青色で表示)

実際の楽器の演奏をデジタル録音したもの

● ソフトウェア音源(GrageBandでは緑色で表示)

機械的にその楽器の音色を再現したもの


両者ともにメリット、デメリットがありますが、それは以下のようになります。


◎ オーディオ音源のメリット

実際の楽器の演奏のワンフレーズを録音したものなので、音が非常にリアル

× オーディオ音源のデメリット

デジタル録音(波形)で録音されたものなので、メロディを変えるなどの音源の加工が不可能


◎ ソフトウェア音源メリット

MIDIデータなので、音程や音の長さを指示することにより自由にメロディを作ることができる

× ソフトウェア音源デメリット

機械的にその楽器の音色を再現したものなので、楽器によっては違和(ニセモノ)感がある 


 さて、一般的に自分で作詞作曲した曲を自分で歌うとなると、作業は膨大なものになります。

(1)作詞・作曲し、アレンジを決定する

(2)全楽器(ギター・ベース・ドラム・キーボードなど)を自分で演奏し、それを録音する

(3)演奏した楽器をミックスしてオケを作る

(4)そのオケに合わせて歌入れをする

(5)ミックスダウンして完成

では、自分で歌うのをやめて、ボーカルはボーカロイドを使い、オケはGarageBandで作ることにしたとすると、この作業の(2)から(5)までをすべてGarageBand上で行うことになります。ですが問題になるのは(2)の工程。この工程ではメロディを作り込んでいきますが、「メロディを作る」とは打ち込み、つまり「ソフトウェア音源に音程や音の長さを指示すること」です。そうなると、あらかじめフレーズを録音してある「オーディオ音源」を使うことができない、ということになるからです。

 オーディオ音源が使えないのがなぜ問題かと言うと、多くの「ソフトウェア音源」は音がリアルとはとても言い難いものだからです。カラオケボックスの演奏を思い出してください。あれもソフトウェア音源ですが、原曲を知っていればとても「リアル」「そっくり」とは言い難い、安っぽくて軽い演奏です。あれは実際にレコーディングされた音源を使っているのではなく、あらかじめ用意されたソフトウェア音源を指定された譜面通りに演奏しているだけだからです(最近のカラオケは技術が上がって、かなりリアルになってはきていますが)。

 実は「GarageBandが優秀」と言われる部分の多くは、Apple Loopsとして用意されている「ソフトウェア音源」がリアルで完成度が高いからです。つまり、ソフトウェア音源のデメリットである「機械的にその楽器の音色を再現したものなので、楽器によっては違和(ニセモノ)感がある」を、かなりの部分で打ち消すことができるからです(ただ、サックスやトランペットなどの一部の金管・木管楽器系はまだ苦手)。では一例として、私が100%ソフトウェア音源だけで制作した曲をご紹介します。



 いかがでしょうか、すべてソフトウェア音源だとわかりましたでしょうか? この曲では以下のソフトウェア音源を使用し、一切のオーディオ音源を使用していません。私がしたことといえば、全楽器のフレーズを決め、それを打ち込みによって自動演奏するようGaragebandに指示しただけです。私はここで鳴っている楽器の演奏の一切をしていません。

・ドラム(Cavern Kit)
・ベース(Fingerstyle Electric Bass)
・リズムギター1(Sunburst Power Chords)
・リズムギター2(Eighties Power Chords)
・リードギター(Sunburst Lead)
・アコースティックギター(12 String Chords)
・ストリングス(String Ensemble)
・ボーカル(初音ミクV3 Solid・Original)

DTMに馴染みのあるリスナーならわかったかもしれませんが、一般のリスナーが「実際に楽器を演奏し、それを録音したもの」なのか、「コンピュータが音素を合成して鳴らしているもの」なのかを判別するのはほぼ不可能です。

 以上のように、使用する全楽器のフレーズを決められるスキルがある方なら、これぐらいのクオリティの曲を難なくアウトプットできる無料のDTMソフトウェア、それが「GarageBand」なのです。ただ、実際に楽曲制作をするとなると、標準で用意されているApple Loopsだけでは物足りません。そんな時は「Main Stage 3」というアプリケーションを購入してください。Main Stage本体は楽曲制作には使用しませんが、これで全てのApple Loopsが入手できます。

Main Stage 3(App Store)3,600円

 多くのMacユーザーに「HDD(SSD)の容量を圧迫する」と忌み嫌われているGarageBandですが、こんなにもすごいことができる!ということくらいは知っておいてもらっても(最終的に「削除」という憂き目に遭うにしても。笑)いいのではないか、と個人的には考えています。