ボカロとDTMで楽曲制作しているDTMer(「P」と自称するのはおこがましいので)にとって、自作曲を聴いていただくのは至難の技です。ニコニコのボカロ界隈はミクさん全盛期の頃から様変わりし、昔ほどの盛り上がりはありません。かといってYouTubeは面白動画で集客するユーチューバーが席巻し、オリジナル曲を地味に発表しているだけのDTMerにとっては厳しい状況です。そんな中、音楽SNSアプリ「nana」が2017年9月よりPCからの楽曲投稿に対応したらしいので、DTMerにとって自作品を発表する新しいプラットホームになり得るか、ちょっと試してみました。

 この「nana」というアプリですが、公式サイトの説明を引用すると

 nanaは音楽を投稿して楽しむ場所です。歌い手はもちろん、たくさんの楽器演奏者や音源制作者がいるので、誰かのギターにあわせて歌ったり、誰かのドラムにアコーディオンを重ねたり。音に音を重ねる(=コラボする)ことで誰かとつながっていく、新しい音楽SNSです。

とのことですが、簡潔に言えば「スマホをカラオケマイクにして歌った歌を録音し、投稿するSNS」と考えれば問題ありません。と、いうのも圧倒的に「歌い手」が多く、楽曲(つまりオケ)を投稿しているのは少数派だからです。

 実はこのnana、仕組みとして大問題を抱えています。それは「著作権」です。このnana自体はJASRAC、JRC、イーライセンスから許諾を得ていますので、商業ベースで流通するたいていの楽曲は投稿可能です。ただし、そうするには「その楽曲を自身が楽器やDTMで演奏した音源に限る」という条件があります。つまり、市販のCDやダウンロード購入した楽曲データからボーカルをカットしてオケにし(オフボ音源と呼ばれている)、それを投稿することは禁止されているのです。もちろんカラオケ音源自体を投稿するのも禁止です。また、カラオケボックスなどの音源を録音して投稿することも禁止されています。しかし、多くのユーザーが「歌いたい!」と考えるのは、まさにこの禁止行為です。だから「大問題」なのです。もちろん運営も指をくわえて見ているだけではなく、一応の善後策を採ってはいるようですが、あまり厳しく対応するとユーザー離れを起こすので、「見て見ぬふりをしつつもあまりにも悪質なものは対応する」というスタンスです。これで永続的なサービスを提供できるのか、とても疑問に思います。

 もちろん、おやさしい楽器演奏者やDTMerが有名曲やヒット曲を演奏し、それを「どうぞオケに使ってください」投稿すれば問題ないのですが、楽器演奏者やDTMerにしてみれば「単なるオケ屋さん」扱いされるのは本意ではありません(私はそんなメンドクサイことする気はさらさらないです)。運営が「音楽SNS」を標榜するのは、実態である「歌ってみたを投稿するSNS」を合法化するために、楽器演奏者やDTMerにオケの投稿を促すための方便のようにも感じます。こういった「一方の善意に一方が乗っかるだけ」という図式は過去の例から見てもいずれは限界を迎え、やがて衰退していきます。SNSは「お互いにメリットがある」か「どちらにもメリットがない(けど楽しい)」でないと続きません。残念ながら、このnanaはその仕組みを構築できていません。ですので、Twitterやインスタのように爆発的に普及することはないでしょう。また、大手カラオケ配信業社が合法的に同様のサービスを始めれば(可能性は高いと思います)、あっという間に駆逐されるでしょう。

 まあ、それでもある一定の市民権を得る可能性がないとは言えないので、一応テストとして私のオリジナル曲「あのね」のカラオケバージョンを投稿しておきました。この音源がどう扱われるかによって「nana」とは運営の言う通り「音楽のコラボレーションSNS」なのか、それとも単なる「違法(脱法)歌ってみたSNS」なのかを判断したいと思います。