私はかつてのアマチュアバンド時代、インディーズ音楽配信サイト「muzie(のちのBIG UP! FREE)」でバンドの音源を配信し、その後「OKMusic(現在のOKMusic For Creators)」でボーカロイド曲を配信していました。muzieについては、運営会社がエイベックスに変更になった時点で脱会。OKMusicは、そこそこの反応はいただいたものの、継続して反応がなかったため数年で脱会してしまいました。こういったインディーズ音楽配信サイトは他にもありますが、ニコニコ動画やYouTubeのように一般リスナーを取り込めず、同じくインディーズのミュージシャンであったり音楽業界関係者のみの、ごく狭いコミュニティでしか成立していないように感じます。

 一般リスナーがこういったインディーズ音楽配信サイトに興味を示さない理由として、

・そもそもインディーズに興味を持っているリスナーが少ない

・ビジュアル(動画)を伴っていない音楽のみという配信はエンターテイメント性が低く、興味を持たれない

・「音楽はネットで無料で聴けるもの」という風潮が蔓延し、メジャーシーンの音楽だけで需要を満たしている

・インディーズの裾野が広すぎて、供給過多・玉石混交であり、好みの音楽を探そうという気にならない

などが考えられます。

 そういった現実の中で、インディーズミュージシャンがいかに自分の創作物をお金に変える(マネタイズ)かを考えるとき、こういった波及力の低いインディーズ音楽配信サイトよりも、ニコニコ動画やYouTubeのようなメジャーなプラットフォームを利用する方が得策だし、実際もそういった利用のされ方をしています。特にYouTubeは再生回数によって収益が発生しますし、話題になればメディアに取り上げられる可能性もインディーズ音楽配信サイトよりはるかに高いです。現実にYouTubeで話題になったミュージシャンがTV出演を果たした例はいくつもあります。またニコニコ動画ではニコニコ超会議などのリアルイベントを開催することによって、ネットでのバーチャル体験をリアルの場に押し広げようとしています。

 この流れは以前からありましたが、近年ますます顕著になってきている傾向があります。もうYouTubeの一人勝ちと言っていい状況でしょう。「インディーズ音楽配信サイト」であれ、「アマチュアミュージシャンとつながるSNS」であれ、すでに将来性がないと判断できるレベルに到達した、と私なら考えます。それを示す具体的な事象としてmuzieはBIG UP! FREEと名を変えたものの2017年5月に廃止BIG UP! はインディーズミュージシャンの有料配信(CD化などを含む)代行サービスに改変。一方のOKMusicは2017年6月にOKMusic For Creatorsと名前を変えて存続しているものの、メインコンテンツのOKMusicは単なる音楽情報サイトへリニューアルしました。この最近の2大インディーズ音楽配信サイトの動きは「インディーズ音楽配信サイトは盛り上がらない、儲からない」という現実を如実に表しているものだと思います。

 よく言われる「モノ消費からコト消費へ」という流れですが、この流れは音楽業界で特に顕著です。残念ですがもう単なる楽曲データに価値はありません。AKBなどのアイドルを例に挙げるまでもなく、楽曲データから波及するリアルでのライブや握手会などのイベント、カラオケ印税など、「コト消費」に価値があるのです。そんな現実を前に楽曲のみで勝負するしかないインディーズミュージシャンにいかほどの需要があるのか? 楽曲の良し悪し以前の問題として、これからのミュージシャンは「コト消費」を生み出せないと生き残っていくことはほぼ不可能でしょう。

 もちろんアマチュアとして純粋な楽しみだけで音楽活動をするなら話は別です。ですが、アマチュアであれ、インディーズであれ、プロであれ、どんなレベルのミュージシャンでも圧倒的なユーザー数と再生数を誇るYouTubeの魅力の前に、インディーズ音楽配信サイトを選ぶ理由はありません。OKMusic For Creatorsを始め多くのサイトは淘汰が進み、やがて消えてゆく運命でしょう。もしくは消えるまでには至らなくても、青息吐息であろうことは否めません。以上のような理由から、インディーズ音楽配信サイトに未来はないし、やがて「消滅」するだろうと私は判断しています。